認知症になりやすい血液型はある?AB型・O型説と最新研究を徹底検証
「AB型は認知症になりやすい」「O型は認知症のリスクが低い」――こうした説を目にして、自分や家族の血液型が気になった人もいるのではないでしょうか。実際、2014年に米バーモント大学の研究者らが発表した研究では、AB型と認知機能障害の発症リスクとの関連が報告され、国内外で注目を集めました。
ただし、認知機能障害と認知症は同じものではありません。2015年には約160万人の献血者を対象にした大規模研究で、ABO血液型と認知症の発症リスクに明確な関連は認められませんでした。さらに2024年には、遺伝子型や性別などを考慮した新たな研究も発表されています。2026年現在、血液型だけで認知症になりやすさを判断できるのでしょうか。研究結果を比較し、AB型説の根拠と限界、実際に取り組みたい予防策を解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:特定の血液型が認知症になりやすいとする、確立した科学的結論はない。
- 要点2:2014年の米バーモント大学の研究ではAB型と認知機能障害の関連が報告されたが、認知症そのものの発症を直接証明した研究ではない。
- 要点3:2015年の大規模研究では明確な関連が認められず、2024年の研究でも遺伝子型や性別によって結果が異なった。血液型より、血圧や糖尿病、運動不足などの管理を優先したい。
【結論】認知症になりやすい血液型はある?AB型とO型の説を検証
最初に答えを示すと、A型・B型・AB型・O型のうち、どの血液型が最も認知症になりやすいのかについて、医学的に確立した順位はありません。AB型のリスクが高く、O型のリスクが低いという説明には、研究に由来する背景があります。しかし、それをすべての人に当てはまる医学的事実として受け取るのは適切ではありません。
混同しやすいのが、「認知機能障害」と「認知症」の違いです。認知機能障害は、記憶力や判断力などの認知機能が低下した状態を指します。一方、認知症は、脳の病気などによって認知機能が低下し、日常生活に支障が生じる状態です。認知機能の低下が見つかった人が、必ず認知症を発症するわけではありません。
また、研究で報告される「リスクが高い」という表現にも注意が必要です。相対的なリスクやオッズ比が高くても、その人が実際に発症する確率が同じ割合で上昇するとは限りません。年齢、健康状態、生活習慣、遺伝的背景など、複数の要因が関係するためです。
つまり、AB型の人が過度に心配する必要も、O型の人が安心しきる必要もありません。血液型だけで将来の認知症発症を予測することはできず、現在の研究はその限界を示しています。
【米バーモント大学の研究】AB型は認知障害のリスクが82%高い?
AB型と認知機能の関係が広く知られるきっかけとなったのが、米バーモント大学の研究者らによる2014年の研究です。医学誌『Neurology』に掲載された「ABO blood type, factor VIII, and incident cognitive impairment in the REGARDS cohort」では、米国の大規模な健康研究REGARDSのデータを利用し、ABO血液型と認知機能障害の新規発生との関連を調べました。
研究では、平均約3.4年間の追跡期間に認知機能障害が確認された495人と、対照群587人を比較しました。血液型は遺伝子解析によって確認され、年齢、人種、地域、性別などを考慮して分析されています。
その結果、AB型の人は、ほかの血液型の人と比べ、認知機能障害の発生に関するオッズ比が1.82となりました。95%信頼区間は1.15~2.90で、統計的に有意な関連が報告されています。
この数字が「AB型は認知症になりやすい」という説の大きな根拠になりました。ただし、ここで押さえたいのは、研究が直接調べた対象は認知症の確定診断ではなく、認知機能障害だったという点です。また、オッズ比1.82は発症確率が一律に82ポイント上がるという意味ではありません。
この研究は、血液型と認知機能の関係を考えるうえで興味深い報告です。しかし、対象者や追跡期間、評価方法に限界がある一つの研究だけで、AB型が認知症の原因になると結論づけることはできません。
【研究結果を比較】ABO血液型と認知症の関連性はどこまで判明した?
AB型説を正しく理解するには、関連を報告した研究だけでなく、大規模な追跡調査や、その後に発表された研究も確認する必要があります。研究ごとに対象者、評価した病気、血液型の分類方法が異なるため、結果が一致しないこともあります。
| 研究・発表年 | 対象と主な結果 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 米バーモント大学などの研究・2014年 | 認知機能障害の495例と対照587人を比較。AB型のオッズ比は1.82。 | AB型と認知機能障害の関連を報告。ただし、認知症の発症を直接証明したものではない。 |
| スカンジナビアの大規模研究・2015年 | スウェーデンとデンマークの献血者1,598,294人を解析。アルツハイマー病、血管性認知症、その他の認知症について、全体として明確な関連を認めず。 | AB型が認知症になりやすいという説を支持する明確な証拠は得られなかった。 |
| 英国バイオバンクを用いた研究・2024年 | 487,425人を対象に血液型の遺伝子型と認知症を分析。BB遺伝子型では、全認知症のハザード比1.36を報告。性別などによって関連が異なった。 | 遺伝子型などに着目した研究は続いているが、一般的な血液型だけで個人の発症リスクを判断できる段階ではない。 |
特に重要なのが、2015年に医学誌『PLOS ONE』に掲載されたスカンジナビアの研究です。スウェーデンとデンマークの献血者を対象に、医療記録などを用いて血液型と認知症の関係を調べました。
解析対象は約160万人で、追跡期間を合計すると2,400万年以上の人年に相当します。その間に確認されたのは、アルツハイマー病3,615例、血管性認知症1,842例、分類が特定されていない認知症9,091例でした。研究チームは、全体としてABO血液型とこれらの認知症との間に明確な関連を認めませんでした。
一方、2024年に医学誌『Frontiers in Neurology』で発表された英国バイオバンクの研究では、血液型を決める遺伝子の組み合わせに着目したところ、特定の遺伝子型と認知症との関連が報告されています。全体の分析では、O型に対応するOO遺伝子型を基準とした場合、BB遺伝子型で全認知症のハザード比が1.36となりました。
ただし、この研究では性別やAPOE ε4という遺伝的要因によって結果が異なりました。AB型に対応するAB遺伝子型についても、男性ではアルツハイマー病との関連が報告された一方、女性では同様の有意な関連が認められていません。こうした結果は研究上の手がかりですが、特定の血液型が普遍的に危険だと証明するものではありません。
研究結果を比較すると、血液型と認知症の関連を示唆する報告は存在するものの、その関連は研究間で一貫していません。対象集団や遺伝子型の扱い、調整した要因によって結果が変わることが、現在の科学的理解のポイントです。

【なぜAB型が注目された?】血液凝固因子と「血液ドロドロ説」の真相
AB型と認知機能障害の関係を説明する仮説の一つが、血液凝固に関係する第VIII因子(ファクターVIII)です。第VIII因子は、出血を止めるための血液凝固反応に関わるタンパク質で、血管や血栓に関連する研究でも注目されています。
2014年の研究では、第VIII因子の値が高い人ほど認知機能障害の発生と関連していました。第VIII因子が40 IU/dL高い場合のオッズ比は1.24でした。また、平均値はAB型で142 IU/dL、O型で104 IU/dLと報告されています。
こうした結果から、AB型と認知機能障害の関係に、血液凝固や血管の働きが関与している可能性が考えられました。血管の健康は脳への血流に関係するため、脳卒中などの血管障害と認知機能とのつながりを調べることには医学的な意味があります。
しかし、第VIII因子がAB型と認知機能障害の関連を引き起こす仕組みまで、確定したわけではありません。同研究では、第VIII因子がAB型と認知機能障害の関連を媒介する割合は18%と推定されましたが、95%信頼区間はマイナス30%から68%に及び、媒介効果は統計的に有意ではありませんでした。
そのため、「AB型は血液がドロドロだから認知症になりやすい」と単純化するのは誤りです。血液の粘度、凝固機能、血栓の形成は同じ概念ではありません。第VIII因子の値だけで、血液がドロドロかどうか、将来認知症になるかどうかを判断することもできません。
また、血液型は遺伝的に決まる特徴の一つですが、血液型そのものが認知症を引き起こすのか、それとも血管や代謝に関係する別の要因と統計的に結びついているのかは、分けて考える必要があります。関連性が確認されても、それだけで因果関係が証明されたことにはならないのです。
【O型は認知症になりにくい?】リスクが低いという説の注意点
AB型と並んでよく検索されるのが、「O型は認知症になりにくい」という説です。この説明には、O型と心血管疾患との関係を扱った研究が背景にあります。2014年の研究を紹介した米国神経学会の発表資料でも、過去の研究でO型と心疾患・脳卒中のリスクとの関係が報告されていたことに触れています。
脳卒中や血管の障害は、認知機能の低下につながることがあります。そのため、血管系の病気と関連する特徴が認知機能にも関係するのではないか、という仮説には一定の合理性があります。
ただし、ここで注意したいのは、O型の人が認知症を発症しにくいと確立されたわけではないということです。スカンジナビアの大規模研究では、O型と比較してAB型が明確に高リスクだとする結果は得られず、認知症全体についても血液型による一貫した差は認められませんでした。
さらに、2024年の英国バイオバンク研究で使われたBB、AB、OOなどの分類は、血液型の遺伝子型です。一般に知られるA型・B型・AB型・O型という表現型と関連しますが、研究では遺伝子の組み合わせをより細かく区別しています。特定の遺伝子型で関連が見つかったとしても、そのまま「B型の人は認知症になりやすい」と言い換えることはできません。
認知症発症リスクの疫学研究では、年齢、性別、既往歴、教育歴、生活習慣、遺伝的背景などを考慮します。それでも、研究対象となった集団で得られた結果が、異なる国や人種、生活環境の人々にそのまま当てはまるとは限りません。
したがって、O型だから予防を怠ってよいわけではなく、AB型だから将来の発症を決めつける必要もありません。血液型の研究結果は、脳の健康を理解するための一つの研究テーマとして捉えるのが適切です。

【プロの結論】血液型より優先したい認知症予防の判断基準
認知症予防を考えるなら、血液型によるリスクの推測よりも、科学的な研究で繰り返し取り上げられてきた修正可能な要因に目を向けることが現実的です。
2024年の『The Lancet』認知症予防・介入・ケア委員会の報告では、高血圧、糖尿病、運動不足、喫煙、難聴、社会的孤立など、生活や健康管理に関わる要因が整理されました。さらに、未治療の視力障害と高LDLコレステロールが新たなリスク要因として加えられ、計14項目が検討されています。
世界保健機関(WHO)も2026年7月に、認知機能低下と認知症のリスク低減に関するガイドライン第2版を公表しました。健康状態や生活習慣、環境に関する要因への対策を重視し、複数の面から予防に取り組む方向性を示しています。血液型だけを基準に発症を予測することより、日常的に管理できるリスクへの対応が重視されているのです。
具体的には、次のような点を日頃から意識するとよいでしょう。
- 血圧・血糖・脂質を管理する:高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合は、医療機関で状態を確認し、必要な治療や生活改善を続ける。
- 体を動かす習慣を持つ:自分の体力や健康状態に合った運動を継続し、身体活動の不足を避ける。
- 喫煙を避け、飲酒を見直す:喫煙や過度の飲酒は、認知症リスクに関わる健康上の問題につながる。
- 聴力や視力の変化を放置しない:聞こえにくさや見えにくさがあれば、検査や治療について医療機関に相談する。
- 人との交流や知的活動を続ける:会話、趣味、学習など、無理なく続けられる活動を生活に取り入れる。
- 気になる症状は早めに相談する:記憶や判断力の変化が生活に影響している場合は、血液型にかかわらず医療機関に相談する。
これらは、認知症を必ず防げるという保証ではありません。しかし、血液型を変えることはできなくても、血圧や生活習慣、治療可能な健康問題には働きかける余地があります。認知症リスクは一つの要因だけで決まるものではなく、複数の要因に目を向けることが大切です。
また、血液型と認知症の科学的根拠を見極める際には、研究が何を測定したのか、対象者は何人だったのか、追跡期間はどのくらいか、別の研究でも同様の結果が出たのかを確認してください。「認知機能障害」と「認知症」、「関連」と「原因」、「相対的なリスク」と「実際の発症確率」を区別するだけでも、誤解を大きく減らせます。
【認知症になりやすい血液型】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:認知症になりやすい血液型はAB型ですか?
A1:AB型と認知機能障害の関連を報告した研究はありますが、AB型が認知症になりやすいと医学的に確立されたわけではありません。2014年の米バーモント大学の研究は認知機能障害を対象としており、2015年の大規模研究では血液型と認知症の明確な関連は認められませんでした。
Q2:O型は認知症になりにくいのでしょうか?
A2:O型の人が認知症になりにくいとする、確立した科学的結論はありません。血管系の病気との関係が研究の背景にありますが、O型であれば認知症のリスクが低いと判断できるわけではありません。
Q3:AB型は血液がドロドロになりやすいため認知症になるのですか?
A3:そのような因果関係は証明されていません。2014年の研究では血液凝固に関わる第VIII因子と認知機能障害との関連が報告されましたが、同因子がAB型と認知機能障害の関係を説明するという統計的な証拠は十分ではありません。
Q4:血液型と認知症の関連を否定する研究はありますか?
A4:あります。2015年のスカンジナビアの研究では、約160万人の献血者を対象に分析し、アルツハイマー病や血管性認知症などとABO血液型の間に、全体として明確な関連を認めませんでした。ただし、一つの研究だけで将来の研究結果まで決まるわけではありません。
Q5:家族に認知症の人がいる場合、血液型も気にするべきですか?
A5:血液型だけで発症リスクを判断することはできません。家族歴が気になる場合は、年齢や家族内での発症状況、健康状態などを踏まえ、医師に相談してください。記憶力や判断力の変化が日常生活に影響している場合も、早めの受診が大切です。
Q6:認知症予防のために、まず何をすればよいですか?
A6:血圧、血糖、コレステロールなどの健康管理を基本に、運動、禁煙、過度の飲酒の回避、聴力や視力のケア、人との交流などに取り組みましょう。持病がある人は、自己判断で治療を変更せず、医療機関と相談しながら対策を続けてください。
まとめ:認知症と血液型の現在の見解と、後悔しない判断基準
認知症になりやすい血液型というテーマでは、AB型と認知機能障害の関連を示した2014年の米バーモント大学の研究がよく知られています。しかし、約160万人を対象とした2015年の研究では、ABO血液型と認知症の明確な関連は認められませんでした。2024年の研究では特定の遺伝子型と認知症の関連が報告されたものの、性別や遺伝的背景による違いも確認されています。
これらの研究結果を総合すると、2026年現在、AB型が最も認知症になりやすい、あるいはO型なら認知症になりにくいと断定できる科学的根拠はありません。血液型と脳の健康との関連については研究が続いていますが、関連性の報告と因果関係の証明は別のものです。
自分や家族の血液型を理由に不安を抱くより、血圧や糖尿病などの健康管理、運動、聴力・視力のケア、社会的な交流といった、取り組める対策を積み重ねることが現実的です。研究の数字だけで将来を決めつけず、確かな医学的知見に基づいて脳の健康を守る行動を選んでいきましょう。 (出典: 認知 症 に なり やすい 血液 型(Yahoo!ニュース))